「てんきや」コラム

#23: 試験に出る気象

…と言っても気象予報士試験ではなく、中学受験のおはなしです。電車の中の広告を見た方もいるかと思いますが(私もその1人です)、日能研の広告シリーズ「■いアタマを●くする。」で気象の問題が取り上げられていました。実際の問題は日能研のページを見ていただくとして、概要はこのようなものです。

福岡と釜山は200km程度しか離れていないが、下図のように福岡のほうが平均気温が2℃ほど高く、また秋から冬にかけて福岡のほうが降水量が多い。この理由を要領よく説明しなさい。
福岡と釜山の月平均気温・月降水量の平年値のグラフ
※グラフは「理科年表・平成16年」(丸善)のデータを基に作成

要領よく説明せよなんて言っていますが、これ、かなり難題です。

まず前半の「福岡のほうが気温が高い」の理由ですが、これは要するに「福岡のほうが南だから」です(もうちょっと厳密に言うと「福岡のほうが緯度が低いから」…でないと南極のほうが暑いことになって×)。赤道に近いほうが暑そう、というのは感覚的にもわかりやすいと思いますが、具体的な理屈は次のようになります。

太陽の角度と入射エネルギーの関係
太陽の高度角と入射するエネルギーの関係
太陽は四方八方に等しくエネルギーを放射しているのですが、真上から入射する場合に比べて太陽が斜めから入射する場合は受け取るエネルギー(=熱)の量が少なくなります。右の図でいうと、赤道の真上に太陽が位置する春分・秋分の時期には、北緯60度の地点では赤道付近に比べて単位面積あたりの太陽から受け取るエネルギーの量は半分になります。太陽の位置は季節によって変わりますが、1年を通じて平均すると、やはり赤道に近いほど太陽から受け取るエネルギーは大きく気温は高くなる、というわけです。

気温を決める要素には、この他にも高度や海流の影響がありますが、福岡も釜山も標高は100m以下なので2℃の気温差は説明できません(一般に標高が100m高くなると気温は約0.6℃下がります)。また福岡と釜山は対馬海峡をはさんだ対岸に位置していますから、海流の影響で気温差が生じる事も考えにくいです。というわけで、結局、福岡のほうが気温が高いのは「南だから」となります。

後半の「福岡のほうが秋冬の降水量が多い」の理由は、このところ日本海側で雪が降る原因と同じで「大陸からの季節風」のためです。北からの季節風が吹きつけるのは福岡も釜山も同じですが、ここでは間にある対馬海峡が大きなポイントです。

冬の季節風による降水
乾燥した季節風が海上で水蒸気を含み陸地で雨を降らせる
いわゆる「西高東低」の気圧配置のとき、日本付近ではシベリア地方から太平洋に向かって北寄りの風が吹きます。この風は出発地のシベリアでは温度が低く非常に乾燥しているのですが、海上に出ると海からの水蒸気により湿った空気になります。また海水は冬でも比較的暖かいため地表付近の大気も温められます。この状態で天気予報でよく聞く「上空に冷たい寒気」が入ってくると、地表付近の暖かく湿った空気が上昇気流により持ち上げられ、雲ができ雨が降るわけです。

釜山の冬の季節風は乾燥しているため雨にはなりませんが、この風が福岡まで到達したときには湿っているため雨(寒ければ雪)をもたらします。これが秋冬、特に冬場の降水量の差になっていると考えられます。

…というわけなのですが、これを限られた時間内に要領よく説明せよとは、中学受験おそるべしです。ちなみに、この問題は理科ではなく社会科の問題なのですよ…参りました。私にはこの学校に入るのはちょっと難しそうです。

(2003/12/19)
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