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「てんきや」コラム

#20: さらば富士山測候所

静岡県富士宮市富士山頂剣が峰。標高3776メートル、富士山頂の剣が峰に建つ気象庁東京管区気象台富士山測候所。気象に興味が無い人でも「プロジェクトX」の第1回の富士山レーダーの話は見たことがあるかもしれません。富士山レーダーは1999年(平成11年)11月に運用を停止して静岡レーダー長野レーダーに引き継がれましたが、気象庁は来年の秋頃に富士山測候所を無人化することを発表しました(気象庁のプレスリリース(PDFファイル))。現在は4名の職員が24時間365日常駐して観測を行っていますが、無人化により観測はアメダスによる自動観測のみとなり、晴れ・雨などの天気の観測が行われなくなるほか、初雪などの発表も無くなります。(ただし富士山の初冠雪を観測しているのは甲府地方気象台なので引き続き発表されるはずです)

富士山測候所のホームページによれば、富士山頂ではじめて気象観測が行われたのが1880年(明治13年)、常駐による通年観測が開始されたのは1932年(昭和7年)です。観測データを見てもわかるように、富士山頂の気圧は平均640hPa程度。日本上空の高層気象を安定して観測できる拠点として重要な役割を担ってきました。また「プロジェクトX」でも取り上げられた気象レーダーは1965年(昭和40年)の運用開始以来、半径800kmの広い観測範囲を武器に台風接近時などに威力を発揮してきました。

今回の有人観測の終了は、ひとことで言えば気象庁のリストラ。気象庁はこれまでにも測候所の無人化を進めておりアメダスによる観測に置き換えられています。(ちなみに通常のアメダスが「地域気象観測所」と呼ばれるのに対して、測候所が無人化されたアメダスは「特別地域気象観測所」と呼ばれています。)また高層気象観測についてもウィンドプラファイラの運用開始により地表からの観測が可能となったため、山岳における観測の重要性が低くなっており、富士山測候所の運営維持はコストや労力に見合わないという判断だと思います。富士山測候所に次いで高所にあった剣山測候所(徳島県・標高1955m)も、1991年(平成3年)に無人化され2001年(平成13年)に廃止されています

政府も財政難ですから費用対効果でリストラを進めるのは当然のこととは思いますが、気象通報で富士山の天気を聞けなくなるかと思うとちょっと寂しいかもしれません。


(2003/10/27)
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