「秋は夕暮れ」
日本には、季節がある。春はあけぼのであるし、夏は夜である。昔から、日本には春夏秋冬が存在する。さて、この秋と言う事、夏が終わり、秋が始まる事の境目を、いかにして人は気づくのであろうか。今の、夏でも冬でも、あるいは春でも秋でも、エアーコンディショナーの登場と功罪により、人は四季の移り変わりを昔ほどには感じないようになったのではあるまいか。
私は、そう言う意味においては幸いな人物である。それは、ランナーと呼ばれる種族であったからだ。ランナー。そう言えば聞こえは良いが、言うなら、そこらの道をジョギングしている奴等の事である。それでも、ランナーは、四季の移りを、敏感に捉える事が出来る。冬の終わりを誰よりも早く、夏の訪れと、終わりを、誰よりも早く感じる事が出来る。風が、その刺すような荒々しさと、癒すような神々しさを、四季の移ろいに先んじて示す事を、誰よりも早く知る事が出来るのだ。
ただ走る事が、何が楽しいのだ?良く聞かれる。しかし、答えはいつも、「そりゃ、走った事が無い奴には分からない」である。だから、私は今日も走る。だから、季節はとうの昔に、次へと進んでいる事を、夏の終わりは、とうの昔に告げられた事を、私は知っているのだ。