気圧計を売ると言っても私が売るわけではありません。売り手は、気象庁。 気象庁のお知らせのページにある売却についての詳細(PDFファイル)を見てみると…
募集終了に伴いページが消去されたようなので地球ウォッチャーズのサイトのGoogleキャッシュの内容を見てみると…
- 気象測器名:フォルタン式水銀気圧計
- 測定範囲:870hPa〜1090hPa
- 寸法:幅11cm・高さ110cm・奥行き10cm
- 重量:3.4kg(本体)
- 製造会社:株式会社 東京鈴木製作所
- 製造年月:平成9年6月
- 使用していた官署:南鳥島気象観測所(東京都小笠原村)
…というようなスペックになっています。要は用済みになった機器を売って少しでも予算の足しにしよう、ということだとは思いますが、南鳥島で使われていた…というあたりがマニア心を誘う一品です。(あまりマニア心は誘わないかもしれませんが、仙台管区気象台でも同様に気圧計が売りに出されています…しかも17台!)
「トリチェリの真空」の原理
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さて、この「フォルタン式水銀気圧計」とはどのようなものなのでしょうか? この気圧計は、右図のように水銀を満たした円筒を水銀の水槽の中で立てると円筒の上部に真空部分ができるという「トリチェリの真空」の原理を応用したものです。円筒中の水銀が及ぼす圧力と大気が水槽の水銀面に及ぼす圧力が釣り合っている、言い換えると大気が円筒中の水銀をこれ以上押し上げることができないため真空ができるわけです。大気の気圧が変化すると円筒中の水銀の高さも変化するため、この水銀の位置を読み取ることで気圧を測ることができる、というわけです。
(ちなみに、水銀の代わりに水を使っても原理的には同じことができます…が、水だと円筒の長さは10m必要です。)
気になる売却価格ですが、いわゆるオークションなのですね、これが。いちばん高い値段で入札した人がお買い上げ。ちなみに新品だといくらぐらいするかと言うと、当該の気圧計はおそらくM10-Aだと思われますが、温度計や気象観測機器などを取り扱っている日本計量器工業のページにあった標準価格表(PDF)によると600,000円となっております。入札は専用の用紙に必要事項を記入して身分証明書を添付の上…って、Yahoo!オークションにでも出品してくれれば気軽に入札できるのに…と思うところですが、気軽に入札できない理由はそれだけではありません。条件が詳しく載っている仙台管区気象台のページを詳しく見てみると…
- 経年による汚れや傷、錆があります。
- 配送はできません。落札した測器のある気象官署で現品を手渡しとなります。
- 精密機器のため運搬は手持ち移動です。また水銀が漏れる可能性があるため45度以上傾けないでください。
- 水銀は産業廃棄物処理法で有害物質に指定されているため、廃棄時は専門の処理業者に引き渡す必要があります(経費は当然落札者負担です)。
- ノークレーム・ノーリターンでお願いします。
…ということなので、興味本位で入札すると確実に痛い目に遭いそうです。というか、気象庁は予算の足しどころか処分費用を浮かせるために売りに出しているようにも思えてきました(笑)。なにしろ1m以上あるシロモノですので気象台の近所に住んでいる人でないと途方に暮れそうですが(原理的に76cmより短くなるわけがありませんから)、逆に徒歩で持って帰れるような人には冗談抜きで1円で落札できるかもしれないチャンスです。ちなみに今ならなんと「携帯用皮ケース」が付いてきます…ってこんなの携帯するのかよ、と突っ込みたくなってしまいますが持ち帰りには最適かも。
この気圧計の売り出し、今後も各地の気象台で予定されているようなので、興味のある方は最寄りの管区・地方気象台のホームページをこまめにチェックしてみてはいかがでしょうか。私も1台欲しいところなのですが…引っ越しのことを考えるとなぁ〜。
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