「てんきや」コラム

#37: 平年と比べると…

天気予報でおなじみのフレーズ「平年と比べると」。この「平年」って、なんでしょうか?

「平年」という言葉を辞書で引くと、「いつもの年」とか「普通の状態にある年」といった意味が出てきます。では、気象の世界では「いつもの」や「普通の状態にある」というのをどうやって決めているかというと、西暦の1の位が「1」の年から30年間の統計をもとに平年の値を算出しています。たとえば「あすの最高気温は平年より2度高め」というのは、同じ時期の30年間の最高気温の平均値と比べると2度高い…という意味です。また「ことしの梅雨の降水量は平年より少なめ」とか「ことしの夏の気温は平年並み」と言う場合は、単純に30年間の平均値と比べるのではなく、30年分のデータを小さいほうから順番に並べて、小さいほうから10番目までが「平年より少ない(低い)」、11番目〜20番目を「平年並み」、そして21番目より大きいものを「平年より多い(高い)」と呼んでいます。

で、今までは「1971年〜2000年」の30年間の観測データをもとに平年値が決められていましたが、2010年までの観測データが出揃ったことで、ことしの5月18日からは「1981年〜2010年」の30年間の観測データをもとにした新しい平年値が使われることになります。気象庁のまとめによると、5月から使われる新しい平年値は現在のものと比べると

  • 平均気温は、全国的に0.2〜0.4度程度高くなっている。
  • 降雪量は、日本海側の多くの地点で10%以上現象している。
  • さくらの開花は、ほぼ全国的に1〜3日早くなっている。
など、いかにも「温暖化してます」といったデータが並んでいます。その一方で、梅雨入り・梅雨明けの時期や台風の発生数・上陸数については大きな変化は無く、なんでもかんでも温暖化で気候が変化していると決め付けるのは早急なようです。

というわけで、5月から平年値が更新されると、地点や時期によっては「平年の気温」が1度近く変わることもあるので、天気予報で「きょうの気温は平年並み」と言われても、慣れるまでは実感と少し違うかも?しれません。

(2011/3/30)
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