アメリカ南部に甚大な被害を及ぼしたハリケーン「カトリーナ(Katrina)」や、日本列島を縦断して全国的に大雨をもたらした台風14号「ナービー」など、災害につながることの多い熱帯低気圧には固有名が付けられ、天気図にも名称が記載され国際的に通用します。発見者に命名権がある小惑星と違って熱帯低気圧の名称はあらかじめ決められた表に従って発生順に命名されるので、自分の名前が天気図に載るのは日本では八木さんくらいかもしれませんが、ドイツでは低気圧や高気圧の命名プログラムが実施されており高気圧・低気圧に好きな名前を付けることができます。
2004年10月 〜申し込み〜この命名プログラムWetterpateはベルリン自由大学(Freie Universitat Berlin)の気象研究所が実施しているもので、ネーミングライツの公募で得られた収益は気象観測の費用に充てられます(地点コード10381、国際的な観測網の一員となっています)。命名権の公募は毎年10月に行われ、翌年の高気圧・低気圧の命名権を先着順に得ることができます。どのような名前を付けることができるかは以前のコラム「天気図に名を残す」を参照してもらうとして、ここでは実際にどうやって申し込んだかを紹介しましょう。
書き上げた申込用紙を受付開始日にあわせてFAXで送付すれば、第一関門突破です。
2004年12月 〜費用の払い込み〜待つこと約2か月、Wetterpateの担当者からメールが届きました。幸いなことに英語で。メールによると国外からの申し込みは初めてとのことで、送付する資料の英訳に時間がかかってごめんなさい、でも先週発送しましたから…というような内容でした。そして、エアメールで届いたのが、このような通知書と請求書。
というわけで、早速送金を…といきたいところですが、海外送金なんて一度もやったことがありません。色々と調べてみた結果、今回は手数料がいちばん安そうな郵便局の銀行口座あて国際送金を利用しました。窓口の方に一つ一つ教えてもらいながら用紙に記入し(向こうもマニュアルのいろんなページを見ながら応対していましたが)、命名権の費用199ユーロ(高気圧だと299ユーロ)にドイツ側の送金仲介手数料5ユーロを加えた204ユーロを送金。日本側の手数料700円を加えて、総費用は29029円でした(送金時の為替レートは1ユーロ=138.87円)。
2005年9月 〜天気図に名を残す〜入金後は特に連絡も無く、ほんまに大丈夫かいな…と思いつつ待つこと9ヶ月、ようやく連絡が来ました。メールの内容は「いまRudyまで進みました。次はSiegfriedで、その次があなたの番ですよ。」という内容。さあ、いよいよ天気図に名前が載る日がやってきました。9月13日。低気圧名の一覧に、低気圧名"Takashi"、命名者"Takashi Hashimoto"、命名日"13, Sep 05"、そして低気圧名の記載された天気図へのリンクが掲載されました。この天気図は9月13日0時(標準時。日本時間では午前9時)に発表された、9月14日12時(同。日本時間では午後9時)の予想天気図で、イギリスの西で発生した低気圧に"Takashi"と命名されました。その後、温帯低気圧"Takashi"は長い前線を伴いながらヨーロッパ大 陸に上陸し、各地に雨をもたらしながら西進して6日ほどで天気図の上から消えました(前線が見えているので、範囲外に出ただけで消滅はしていないようですが)。
そんなこんなで、めでたく私の名前が天気図に載りました(まあ自己満足以外の何物でもないわけですが)。2006年分の命名権の募集は10月4日から。来年は今年と逆で、高気圧が男性名、低気圧が女性名です。あなたなら、どんな名前を付けますか? |
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