今年は本当に台風の当たり年で、台風16号(チャバ)によって鹿児島では高波により灯台が根こそぎ流失、瀬戸内の地域では2mを超える高潮で床上浸水などの被害が出ました。また9月5日23時57分頃に東海道沖で発生したマグニチュード7.4の地震では津波警報が発令され、津波による被害こそほとんど無かったものの最大90cmの津波が観測されました。このように、高波・高潮・津波はいずれも海が引き起こす災害ですが、その原因や性質はずいぶん違います。 高波とは波は海面上で風が吹くことで発生します。当然強い風が吹くほど高い波が発生するわけで、台風の接近した海域では場合によっては10mを超える高波が発生しますし、冬の日本海で波が荒いのもシベリア高気圧がもたらす強い季節風が原因です。さて、海面がいちばん高いところと低いところの差が波の高さとなるわけですが、当然のことながら高い波もあれば低い波もあります。では天気予報などで発表される波の高さとは、どのような波の高さなのでしょうか。 最大値? 平均値? 実は「有義波高」という特別な値が用いられています。
有義波高は上位3分の1の波高の平均値ですから、これより高い波が来る可能性もあります。確率的には、1000回に1回は有義波高の2倍の高さの波が来る可能性があり、例えば天気予報で「波の高さは2m」と言っていた場合でも、数時間に1回か2回は4mの高波が押し寄せることがありますので、海のレジャーなどの際には充分注意する必要があります。また、風が波の原因になると書きましたが、好天で風が弱い地域でも遠くの高波が「うねり」として伝わってくることもありますので、海に遊びに行く際には必ず波浪に関する予報や注意報をチェックしてください。
高潮とは
高潮が被害を及ぼすかどうかに関わる大きな要因が潮の満ち引きです。満潮の時間帯でもともと潮位が高くなっているときに高潮でさらに海面が上昇すると、あっという間に海水が陸に押し寄せて被害を及ぼします。
■ 月の引力は、月に近い場所ほど強く、月から遠い場所ほど弱い。 ■ 遠心力は、月に近い場所ほど弱く、月から遠い場所ほど強い。 という関係になりますので、左図のように、月に近い場所では月の引力が強いために海水が月のほうへ引っ張られて海面が上昇し、月から遠い場所では公転による遠心力が強いために海水が外側へ引っ張られてやはり潮位が上昇します。これが、満潮。逆に月と地球を結ぶ直線上から離れているときには海面を引っ張る力が働かないため満潮時に比べると潮位が下降します。これが干潮です。地球は1日1回自転していますから、基本的には満潮・干潮それぞれ1日2回めぐってくることになります。
(注)ただし月も地球の周りを公転しているため必ず2回ずつあるとは限りません。また地形や海流などの影響のため月の南中時刻と満潮時刻は必ずしも一致しません(むしろ、かなりズレがあります)。
というわけで、低気圧や台風が接近する時間帯と満潮の時間帯が重なると高潮の影響が大きくなり、これに大潮の時期が重なるとさらに潮位が高くなるわけで、先述の台風16号ではまさにこの条件が全て揃ってしまったために大きな被害が発生したわけです。
このほかに潮位に影響を及ぼす要因として海水温があげられます。水温が高くなると海水が膨張するため潮位が上昇します。このため夏場に潮位が高くなることがあるほか、黒潮などの暖水流が異常潮位の原因となることもあります。
津波とは
高波や高潮と比べて恐ろしいのが津波の威力とスピードです。普通の波は海面近くの海水だけが風により動かされているのに対して、津波は海底から海面まで海全体が地盤変動により動かされて生じるため、波の持つエネルギーも大きくなります。また高潮は海面がじわじわと上昇するのに対して、津波は水深5000mの外洋ではジェット機並みの時速約800キロ、水深100mの場所でも時速100km以上の速さで伝搬します。例えば1960年に南米のチリ沖で発生したマグニチュード8.5の地震では、約15時間後にハワイ諸島で最大10m以上の、そして地球のほぼ真裏にあたる日本でも地震発生から約1日後に数メートルの津波が押し寄せ被害を及ぼしました。
波の測りかた
高波・高潮・津波、それぞれ性質は異なりますが、いずれも無闇に近づくと危険であることは共通しています。波浪や高潮の注意報・警報が出ているときは用もなく海岸に近づかない、そして津波の注意報・警報が出たときはとにかく高台へ逃げること、これが肝心です。 |
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