ここ数日で急に寒くなりました。日本各地から雪の便りも続々と届き始めているようです。そして天気予報では「上空の寒気が…」という言葉がよく聞かれるようになってきました。
さて、この上空の寒気、雨が降るか雪が降るかを決める重要な要素になります。気温が0℃よりも高くなると雪が融けて雨になるのではないか、というのは想像がつくと思いますが、一般的には次のように言われています。
・地表付近の大気の温度が 3℃以下のとき、雪が降りやすい。
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・高度1500m付近の大気の温度が -6℃以下のとき、雪が降りやすい。
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・高度5500m付近の大気の温度が-36℃以下のとき、大雪になりやすい。
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標高が100m上がると気温は0.6℃下がる、というのは聞いたことがあると思いますが、1500mだと気温は9℃下がる計算になりますので、実は最初の2つはほとんど同じようなことを言っているわけです。
テレビなどの天気予報で「上空の寒気が…」と言う場合、高度1500m付近と高度5500m付近の2つを区別せずに話が進むことが少なくなかったりします。まあ細かいことには拘らなくても良いといえば良いのですが、「氷点下36℃の寒気が…」と言えば高度5500m付近、というように気温でどの高度の話をしているか大体想像できます。
ところで、高度1500m付近とか高度5500m付近とか、何故こんな曖昧な表現が用いられているのでしょうか? 秘密は、高層天気図にあります。
ふだんテレビや新聞で目にする天気図は、地表における気圧を測定し作図した地上天気図です。この地上天気図には等圧線が引かれています。これに対して、高層天気図は上空の大気を観測した結果をもとにして、500hPa、750hPaなど決められた気圧になっている高度を示す等高度線を引いて作図しています。…という説明では分かりづらいと思うので、右のリンクから実際の高層天気図を見てみてください。等高度線が実線で、等温線が破線で記入されています。
改めて高層天気図を見てみると、850hPaの高層天気図には高度1500mの、500hPaの高層天気図には高度5700mの等高度線が、それぞれ太実線で記されています(季節や気象状況によっては無いかもしれませんが、これに近い高度の線があるはずです)。ということで、細かい話になってしまいましたが、最初に挙げた雨か雪かの条件は、厳密に書くと次のようになります。
・地表付近の大気の温度が 3℃以下のとき、雪が降りやすい。
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・気圧850hPaにおける大気の温度が -6℃以下のとき、雪が降りやすい。
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・気圧500hPaにおける大気の温度が-36℃以下のとき、大雪になりやすい。
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ただし、この3つの条件を満たすと必ず雪が降る、というわけではなく、暑かろうと寒かろうと晴れの日は晴れ、なのでお間違えなく。
ところで、1つ目の条件を見て「気温が0℃以上だったら雪は融けて雨になるのでは?」と思ったかもしれませんが、実は気温が0℃より高くても雪は融けないことがあります。これは、雪(=固体の水)が融けて雨(=液体の水)になるためには周囲の大気から熱を奪う必要があるのですが、大気の温度が低いと融けるのに必要な熱が十分に得られないため地上に到達するまでに融けきらないことが理由です。また大気が乾燥している場合には、雪(=固体の水)が昇華蒸発して水蒸気(=気体の水)になることがあります。水の場合、固体→液体に変化するときに周囲から奪う熱量が0.334MJ/kgであるのに対して、固体→気体に変化するときに周囲から奪う熱量は約8.5倍の2.83MJ/kgと大きくなっています。従って、湿度が低く雪が昇華蒸発しやすい状況では、雪が蒸発することにより大気が熱を奪われ冷やされるため雪が融けにくくなるのです。
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